昨日 (2019/06/08) に、マイクロソフト様などの企業が主催するコミュニティー DEEP LEARNING LAB の 2 周年イベントに参加してきました。
というのもここ1ヶ月ほど、対応しなければいけないことができてしまい機械学習の勉強にあまり時間を割くことができておらずフラストレーションが溜まっていたんです。
そんなとき、connpass で、このイベントを見かけて、テーマにもすごく興味を惹かれたので参加させてもらうことにしたという次第です。
コミュニティー、イベントについて
DEEP LEARNING LAB は、ディープラーニングの実社会での応用を推進することをとても意識されているコミュニティらしいです。
今回の2周年イベントのテーマも「ディープラーニングの社会実装を阻むものは何か?」ですし。
今回の 2 周年イベントには、速報値で 400 人ほどの方が参加されたそうです。
コミュニティー系のイベントではかなり大規模なものではないかと思います。
イベントでは、基調講演が行われ、その後は、メイン会場でのセッションと、ワークショップに別れます。
基調講演を担当していたのは、東大の松尾先生とマイクロソフトのシニアデータサイエンティストである Rahul Dodhia さん。
イベントとコミュニティーの詳細については、下記もご覧ください。
- イベントページ (connpass):https://dllab.connpass.com/event/124666/
- DEEP LEARNING LAB の Web ページ:http://dllab.ai/
- DEEP LEARNING LAB の紹介資料:https://1drv.ms/b/s!ApdnOiBtVi9VlNoNnkNLWr9Oe89wAw
ディープラーニングの社会実装を阻むものは何か?
私は、ずっとセッションに参加していました。
各セッションは、いずれもディープラーニングの経験豊富な企業様がいろんな角度からお話されていて、どれも大変おもしろく聞かせていただきました。
活用事例と、それらの事例を通してのツラミや課題をお話されている方が多く、各社様で認識する課題には共通する部分が多いのだなという印象を持ちました。
ざっとまとめると、現状では下記のような課題があるとのこと。
- 課題を超えてモデルを流用することが難しい (案件ごとにカスタムメイドのモデルが必要なケースが多い)
- やってみないと有用な結果が出てくるかわからない
- 上記 2 点から、ROI (費用対効果) が求めにくいにもかかわらず、カスタムメイドの開発が必要なことになるので、投資として成立させづらい
- 顧客側で、どうやって AI を活用するかについてのビジョン・目的が定まっていないケースではプロジェクトが長期化する傾向がある
- 顧客含めて(ビジネスサイドからも)試行錯誤が必要
- 結果の解釈困難性 (特に製造業など失敗が許されない領域では問題になる)
- データ収集、IoT 部分のシステム構築の困難
- デープラーニングのバグ取り、デバッグは大変 (間違っていてもそこそこ学習ができてしまう場合がありバグがあることに気づきにくい)
- 教師データ (アノテーション) の作成が大変
- 手間がかかるのはもちろんだが、タスクに対して適切なアノテーションはつけられる人が限られる (その道のプロとか職人さんだったりする)
- 人材、スキル不足
- データサイエンティスト、データエンジニアの不足
- 運用を射程に入れた場合は、さらに求められるスキルが多様化する (ビジネスへの理解、インフラ、運用など)
- 特定の業界・業種、タスクに特化した知識も必要
- PM 人材の不足
- 実運用稼働までできているシステムそのものが少ないので、経験のある PM が不足するのは当然
- GPU 運用のツラミ
- ソフトウェアライセンス
- エッジデバイスでの利用を考えたときに問題が発生する場合がある
ご覧の通り、かなりいろんな角度からの課題についてのお話があり、内容の濃い一日でした。
こうしてみると、課題が多いことにため息が出てしまうような気もしますが、同時に今後これらの課題がいろんな形で解消され、応用が広がっていくのを見ることができる分野という意味で魅力的にも感じました。
また、個人的に印象に残ったのは、基調講演での松尾先生が、実社会での応用例が少ないからと言って、あまり悲観する必要はないとおっしゃっていたことです。
インターネットを例に上げていらっしゃったのですが、新しい技術が社会に出てきてから有効にビジネス活用されるまで、10-20年くらいはかかるはずであるとのこと。
ポテンシャルとしては、インターネットと同じくらいの可能性を秘めた技術だと思うので、
今後、AI ならではのビジネスモデルや業界が生まれるたり、社会の仕組みそのものが変わっていったりするのは、恐ろしくもあり楽しみでもあるなと思ってしまいました。
まとめ
ほんとにいろんなお話が聞けた学びの多い一日で、フラストレーションを無事解消することができました (笑)
今は、比較的新しい技術ということで PoC 的な案件が多いそうですが、そうしたフェーズが終わり、よりシビアな ROI が求められるようになったときには、今以上に上記の課題に向き合わなければいけなくなってくるのかもしれません。
松尾先生も、どれだけの痛みを伴うものかはわからないが、ネットバブル崩壊に対応することが起こるのではないかというふうにおっしゃっていました。
少し脱線してしまいますが、私は仕事では xR (VR: 仮想現実、AR: 拡張現実、MR: 複合現実の総称) 系のプロジェクトに携わっているエンジニアなんですが、 xR についても、
- ここ数年で利用が本格化してきた比較的新しい手法である
- 完成結果が予想できない (視覚を主とした感覚に訴えるものであるため、完成品を体験してみるまでなんとも言えない)
という特徴をディープラーニングと共有しているので、上記したディープラーニングが抱える課題は xR にもかなりの部分で当てはまります。
まだまだ PoC 中心で、エンジニア・PM ともに不足に悩まされている点なんてそのまんま xR の悩みだったりします。
また、AR、MR では現実に情報を追加するという特性上、現実の情報を取得するセンサーや IoT のエッジデバイスと組み合わせられることも多々あり、その点でも課題を共有しています。
もしかすると、AI と xR がお互いから学べることは多いのかもしれません。
また、松尾先生も比較に使ってらっしゃったインターネットの発展の歴史からも。
そして、よく xR 業界と比較されることが多い映画の発展の歴史や、その他の様々なことからも学べることがあるのかもしれません。
(映画の場合も、初期には舞台での演技を映像に残すだけにとどまっていたところから、映像ならではの表現を獲得するまでにそれなりの時間を要したらしいです。)